電源制御ワークベンチ Buck / Boost

averaged model · 設計初期検討/教育用 · オフライン動作
これは何をする道具か
スイッチング電源(降圧・昇圧)の制御ループを、部品の値から特性まで通しで見るものだよ。 出力電圧を測って、目標との差からスイッチのON時間を決めて、また測る——その一周がちゃんと収まるか、 それとも発振するかを、ボード線図と波形の両方で同時に見られる。
電源の制御を初めて触る人でも、下のプリセットを順に選んでいけば掴めるようにしてある。 値の欄と結果の欄にある ? を押すと、その項目の説明が出る。
触って読む順番:
「1. 安定な降圧」のまま、右の出力を眺める。入力した部品から、出力電圧・クロスオーバ・位相余裕が出てくる。
「3. 振動的」に切り替える。位相余裕が 12° まで落ちて、負荷ステップの波形が長く尾を引くのが見える。位相余裕は波形の粘りだと分かる。
「7. Type-III 教科書例」で、補償器の零点2つが LC共振の位相をどう押し返すかを見る。Type-II に切り替えると足りなくなる。
「8. 同じ部品に遅れを入れる」——部品は同じで遅れ Td を足しただけ。位相余裕が半分になる。
「12. 電解+セラミック混載」で、出力コンデンサを「1種」に切り替えてみる。まとめた途端に位相余裕が 57°→32° に落ちる。
Boost(昇圧)へ。「B1」「10」を見比べると、同じ昇圧でも右半平面零点の位置で打てる手が変わる。
部品から特性を見るのが上半分、欲しい特性から部品を出すのが下半分(設計)。向きが逆になっている。 式の前提は最下部の「計算ルール」に、詳しい導出は計算手順、 合っているかの検証は検証レポートに。
入力 — 回路にあるもの

電力段

出力コンデンサ

変調と制御

変調と制御のパラメータ?

検出(分圧)

出力電圧はここでは入力しない?

補償器 Gc(s)

出力 — 上の回路から出てくるもの

この回路が何になるか

MLCC の実効容量

公称容量で設計すると実機で位相余裕を失う?

時間応答

閉ループの起動と負荷ステップ(参考)

ループ解析 (Bode)

設計 — 欲しい特性から部品値を出す(向きが逆)

目標から部品値へ

特性 → 部品(上の解析とは逆向き)?
▸ このワークベンチの計算ルール
  • Buck(降圧)は理想CCMで Vout ≈ D·Vin(D = Vout/Vin)。
  • Boost(昇圧)は理想CCMで Vout ≈ Vin/(1−D)(D = 1 − Vin/Vout)。
  • 時間応答は平均化モデルを RK4 で積分。巻線抵抗 rL と出力コンデンサ ESR を含む(純理想ではない)。閉ループはソフトスタート+duty 飽和+アンチワインドアップ付き(飽和して押し続けている間は補償器の状態を凍結する方式)。
  • 補償器は 3 種類。PI = (Kp·s+Ki)/s、Type-II = Kc(1+s/ωz1)/[s(1+s/ωp1)]、Type-III = Kc(1+s/ωz1)(1+s/ωz2)/[s(1+s/ωp1)(1+s/ωp2)]。零点は位相を進め(1つで最大 +90°)、原点極が低周波ゲインを、高周波極が高域のロールオフを作る。時間応答側も同じ Gc を離散化して回している(積分は台形則、進み網は Tustin の1次IIR)ので、Bode と波形は同じ補償器を見ている。
  • 自動配置は k-factor 法。目標 fc での「補償器以外(Fm·Gvd·センサ·遅れ)」の位相を測り、目標 PM に足りない分を零点と極の対称配置(fz = fc/√k, fp = fc·√k)で稼ぎ、最後に Kc を |T(fc)| = 1 から解く。零点で稼げる位相には上限(Type-II で +90°、Type-III で +180°)があり、届かない時はそう言う。高周波極は fsw/2 で頭打ちにする。
  • PWM変調ゲイン Fm = 1/V_ramp_pp。補償器の出力は電圧、操作量はデューティ比なので、この換算が要る。ランプ振幅を 2 倍にするとループゲインは 6 dB 下がる。時間応答側でも同じ Fm を通している
  • ディジタル遅れ Td(ADC変換+演算+PWM更新+ゼロ次ホールドの合計)は e^(−sTd) としてループに入る。ゲインは 1 のまま、位相だけ φ = −2π·f·Td 遅れる。fc が高いほど食われる量が増える。
  • Bode は 制御→出力 Gvd(s)(青)と ループゲイン T(s)=Gc·Fm·Gvd·センサ·e^(−sTd)(緑)を表示。0dB を横切る周波数が制御帯域 fc、そのときの位相から 位相余裕 PM = 180° + ∠T、位相が −180° を横切る所のゲインから ゲイン余裕 を読む。0dB 交差の回数も数えている(複数回横切る事があり、低い方だけ見ると高い方の危ない交差を見落とす)。
  • Boost の RHP(右半平面)零点f_z = R·(1−D)² / (2πL) [Hz]。負荷が重い(R小)・L大・高昇圧比(D大)ほど低くなり、制御を難しくする(ゲインは持ち上げるが位相は余計に遅らせる)。Buck には出ない。帯域 fc は f_RHP より十分低く保つ。
  • 逆応答の波形は開ループで duty を ΔD ステップした応答。動作点の近くの見方で、大きな ΔD では平均化・線形の前提から外れる。
  • 周波数表示は Hz(内部の伝達関数は ω = 2πf で評価)。RHP零点・LC共振も Hz。
  • CCM 前提。インダクタ電流が下限で 0 を切る(ILavg < ΔIL/2)と DCM の懸念を警告。DCM では小信号応答が変わるため、RHP零点式などはそのまま当てにできない。
  • 検証レポート → この道具が正しく計算しているかを確かめた記録(実際に走らせた結果をそのまま出している)。
  • 計算手順の詳しいページ → 式の導出、なぜその近似なのか、コードのどの関数に対応するか、そしてこの道具が扱っていないものを全部書いてある。
  • 閉ループ起動応答は参考。実機の起動は電流制限・磁気飽和・負荷条件等で変わるため、この波形で起動を保証するものではない。
注意:このページは平均化モデル・小信号モデルを使った教育用/設計初期検討用ツールです(主にCCM前提)。実際の電源設計では、スイッチングリプルの厳密形状・FET/ダイオード損失・ESR/ESL・磁気飽和・熱・レイアウト・EMI・保護回路・絶縁・部品ばらつき・サブハーモニック発振・実機/SPICE/実測を必ず確認してください。商用電源や高電圧回路では十分な安全対策が必要です。ここでの数値は設計の当たりをつけるためのもので、実機の保証ではありません。