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スミスチャートは「地図」である

スミスチャートというものがある。

RFや無線の分野に関わったことがある人なら、一度は見たことがあるはずだ。丸い円の中に、円弧が何重にも重なったあのグラフ。初めて見ると「なんだこれは」としか思えない。

でも、あれは地図なのだ。

何を地図にしているのか

電気回路には「インピーダンス」という量がある。電流の流れにくさ、みたいなものだと思えばいい。

普通の抵抗は実数値で表せる(たとえば50Ω)。でもコンデンサやコイルが混ざると「複素数」になる。Z = 30 + j40Ω、みたいな感じだ。虚部のjは「位相のずれ」を表している。

スミスチャートは、この複素インピーダンス全体を「半径1の円の中」に射影したものだ。
数学的にはメビウス変換という写像で、`w = (z-1)/(z+1)` という式で変換される。

インピーダンスZが50Ω(= 1.0、正規化後)のとき、チャートの中心になる。
抵抗だけなら実軸上。誘導性(コイル)なら上半分、容量性(コンデンサ)なら下半分。

なぜ円になるのか

インピーダンスの実部(抵抗成分)が一定の点を集めると、チャートの中で円を描く
虚部(リアクタンス成分)が一定の点を集めると、別の円弧を描く

だから、スミスチャートは「定抵抗円」と「定リアクタンス弧」が無数に重なった図になる。

これが便利なのは、インピーダンスを変換する操作(直列にL/Cを追加するとか)が、チャート上での移動として視覚化できるからだ。どこからどこへ行けば整合が取れるか、図を見ながら直感的に分かる。

誰が作ったのか

1939年、Philip H. Smithというベル研究所のエンジニアが考案した。
当時は計算尺で複素数の計算をやっていた時代だ。スミスチャートを使えば、面倒な複素数演算を円の上を動くだけで代替できた。

コンピューターが登場してから「もう手計算ツールは要らない」と思われたが、スミスチャートは生き残った。視覚的な直感を与えてくれるから。「数字は出たけど、それがどういう意味か」を理解するのに、チャートは今でも役に立つ。

— ランキン